ロマノフ家の人々
皇太子アレクセイは帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世のたった一人の跡取でした。
血友病を患い、そう長くは生きられないだろうと思われていました。気のせいか、このアレクセイはなんとなく、「オル窓」の少年時代のイザークに似てしまったような気がします。
何故かラスプーチンという怪僧だけが、この少年の出血を止めることが出来たのです。両親である皇帝夫妻は、とくに皇后アレクサンドラは狂信的なまでにこのラスプーチンに絶対的な信頼を置くようになりました。
ロシア宮廷を牛耳るような権力を持つほどの人物となりました。また、女癖も悪く、宮廷の貴婦人たちもその毒牙にかかったといわれています。あろうことか、皇后アレサンドラさえもその中にいたと噂されました。
いまでいう催眠術のようなことも出来たと言われています。皇后の姉エリザベート大公妃もラスプーチンを遠ざけるように進言しましたが、盲目的になっている皇后には通じません。結局怪僧ラスプーチンは
フェリックス・ユスーポフやドミトリー大公たちによって暗殺されましたが、皇后アレクサンドラは最後まで目が醒めませんでした。
時代はロシア帝国崩壊へと移り変わっていきます。
ロシア革命についてはここでは言及しないことにします。詳しい専門のサイトがあります。
帝位を退いたニコライ2世の一家は1918年7月、幽閉先のイパチェフ館で全員銃殺されたことになっています。
事件はそのニ年後、ベルリンの運河に身投げをして助け上げられた若い女性がいました。
彼女は「私はアナスタシア皇女」だと名乗りました。そうです、家族全員が殺されたはずの皇帝一家の四女アナスタシア
だと公表しました。彼女だけ生き残り、ある兵士に助けられたと言いました。その時点で胡散臭い話ですが、実際肯定派と否定派に
分かれて各国王室や親戚、廷臣その関係者を巻き込んだ大事件となりました。
肯定派には皇帝の従兄弟大公アンドレイ、ロイヒテンベルク公爵、否定派にはアーニーおじさんことヘッセン大公エルンスト、皇帝の妹オリガ大公女、
マウントバッテン伯爵などがいました。ロシア皇帝が生前残したとされる架空の銀行口座の莫大な財産がらみの
真贋論でそれこそ全世界が大騒ぎしました。 1994年、アンナ・アンダーソンの遺体をDNA鑑定したところ、彼女はアナスタシア皇女ではなく、
行方不明とされていたポーランドの女工フランシスカ・シャンツコフスカであると断定されたようです。その行方不明とされている
フランシスカの姉ガートルードの息子であるカール・マーシャルのDNAを鑑定したところ彼女のそれと一致したそうですよ。
英国女王の夫君エジンバラ公のDNAは、その祖母がロシア皇后アレクサンドラと姉妹の間柄(彼女たちの母アリスはヴィクトリア女王の娘)になり、その皇女たちと同じDNAを持っているとされています。
ちなみに頑強な否定派だったマウントバッテン伯爵はエジンバラ公の叔父サンに当たります。このマウントバッテン伯爵は若い頃、アナスタシアのすぐ上の姉マリアに恋心を抱き、終生自室に彼女の写真を飾っていたそうですよ。
この伯爵様は生涯独身でしたっけ・・・。
アンナ・アンダーソンのDNAはロマノフ家のだれのDNAとも一致しませんでした。
現代科学ではいろいろなことが解明されますが、謎は謎のままで残しておいた方が、神秘的で浪漫があります。
殺されたと信じられていた皇女が実は生きていて、一兵士に助けられ、やがて愛し合うようになり、子供も生まれる・・・そこでめでたしめでたしと
ロマンチックに終わればよかったんですけど。
追記・マウントバッテン伯爵は結婚して娘が二人います。なんとなく故人を偲んで独身だったら・・・と思いたかったのかもしれません。
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